アダルト・チルドレン(AC) 

 

 今の自分の共依存の傾向、依存の傾向があるのはなぜでしょうか?

 やはり、幼少期に親や身近な大人から受けたストロークとメッセージに大きな由来があると言われています。

 

 子ども時代に身に着けたルールが、大人の今も大きく影響していることを学びました。

 

 今の自分の周囲で起きていること、その原因が全て他人や環境のせいだけではありません。その環境や他人を引き寄せるプロセスの由来が、遠い昔に身につけた自分のルールみたいなものの中にあるとすれば、そのルールを「今ここ」で解放させればよいという主旨でした。

 

 今も引きずっている傷のようなものを、「トラウマ」という言い方をします。しかしこれは何も、大きな事故や事件だけがきっかけになるとは限りません。

 特に、家族という環境が世界の全てであった、子ども時代の強烈なマイナスストロークや、繰り返される条件つきのストロークは、根深いトラウマとなります。大人であれば反発するようなものでも、身近な大人が 絶対的存在である子どもにとっては、強く抵抗できません。つまり、受け入れるしかないのです。多かれ少なかれ誰でも、ずっと深いこころの意識の底に、無自覚に抱えているトラウマはあるのです。

 

 幼いころに受けた、この「トラウマ」をずっと癒すことなく大人になってしまった人を、「アダルト・チルドレン」と言います。

 

 

● アダルト・チルドレンを認めるということ

 

 言葉のニュアンスから、アダルト・チルドレンとは、大人になっても子どものままの人、と誤解されがちなネーミングですが、そうではありません。

 

 アダルト・チルドレンとは、大人になっても子どものときに受けた傷を抱え続けている人たちのことです。

 

 子どものとき、こころを傷つけるような言動や暴力のある家庭、子どもらしく自由に振る舞えなかった家庭で育ったことで大人になった今も、こころや人間関係に障害を持つようになるのです。

 

 例えば、本当は嫌なのについつい周囲の期待に沿って振る舞ったり、相手に「NO」がなかなか言えなかったり、自分の感情が自分でわからなかったり、生きることを楽しいと思えなかったりといった、様々な生きづらさを感じてしまいます。遠い昔の傷が、その人の今現在の生活、人生に大きな悪影響を与えるほど、その後遺症は大きなものです。

 

 「問題なのは、次の世代にも同じ悪影響を伝えてしまうということです。自分の問題に気づいていないと、自分だけでなく、周りの人や次の世代の人生をも惨めなものにしてしまうのです。だからこそ、アダルト・チルドレンであると気づいた人は、自分をいたわり、自分を癒す責任があるのです。

 自分の傷を癒すことによって、自分の人生も、また家族との関係もよいものに変えることができます。人生は選ぶことができるものです。そして、どんな人生を選ぶかは、あなた自身にかかっているのです。」

 

 乱暴な言い方をすれば、アダルト・チルドレンとは、「自分は親の犠牲だった」ということを認めることです。大切な親を、こんな風に捉えること自体抵抗のある人が多いので、なかなか気づけていない人も多いのも事実です。

 親のおかげでここまで来れたという気持ちと、親のせいでこんな苦しみを背負わなければいけなかったという気持ちと、両方あって当然なのです。どちらかに偏る必要もないのに、なぜか前者だけが強調されています。

 

 今の生きづらさは、今のあなたが弱いからとか、愛される資格がないからではないのです。今のあなたや、今のあなたの周囲のせいではないのです。犠牲者は癒されて当然なのです。充分に癒されるからこそ、初めて「もう忘れよう」とか「親も大変だったんだろうな」とか「これが私なんだ」とか「今を大事にしよう」などと、心底思えるのです。

 

 手負いの獅子が、どんなに平静を装っても、一触即発の危機感をはらんでいるのと同じです。偽りの平静さは、所詮偽りです。こころの底にうずく怒りや恨みは、身近なところでジリジリと姿を現します。

 それが、自分自身や、あるいは家庭や職場の弱者にぶつけられるようになるのが、最悪な事態だという自覚が必要です。傷は傷で、癒す必要があるのです。

 

 ですから、親の犠牲者であることを認めることは、自分を認め、自分を癒し、自分の自由を獲得することの大切なステップなのです。

 

 

● サーカスの小象はアダルトチルドレン

 

  ~自分の中にいる「小象」をかわいがって、勇気づけてあげて~

 

 サーカスに連れてこられた小象は、足に鎖をつけられています。どんなにもがいても鎖はとれません。小象は、自分がいかに力がないか、自由でないかを思い知らされます。そして、その世界で生きていくために、もがくことを諦め、順応していくことを身につけていきます。

 

 

 

 やがて、小象は成長し、身につけた生き方に慣れてくると、足の鎖は、ゆるいロープに変えられます。

 

 

 そしてそのうち、ロープはスカーフに変わります。

 

 

 

 逃げようと思えば、逃げることはできるのですが、像は、大人になっても幼いころに刷り込まれた鎖のイメージにとらわれたままです。逃げることができないと信じています。

 

 幼いころに刷り込まれた自己イメージに縛られた象。改めて、足もとにあるのは、今はただのスカーフであることに気づいてもらう、それがセラピーの目的で、インナーチャイルドセラピーといいます。

 

 

 「足に、もう鎖はない!自分の力と意思で、どこにでも行ける!」これをこころから信じられるようになるのがアダルトチルドレンからの回復なのです。

 

● 「癒し」は自分の責任・「癒し」の力は自分の中に

 

 「親はなくとも子は育つ」と言いますが、家庭や周囲がどんな状況でも、たいていの子は何とか育ち、困難を乗り越え大人になります。しかし、その過程で子どもは必ず、優等生を演じたり、感情を押し殺す子になったり、我慢する子になったり、その子なりの役割を引き受けるようになります。こうして子どものころから、親や周囲のために自由な子ども時代を犠牲にして、子どもは子どもなりに精一杯、歯を食いしばって耐えています。

 さらに、大人になった今も、良い子を演じ続け、とうとうこころが壊れてしまうのです。

 

 インナーチャイルド・セラピーの作業をすることで、こころが壊れてしまう入口となった傷、こころに空いた穴が埋まっていきます。マイナスストロークで傷ついたこころやその穴を誰かや何かで埋めようとしても、埋めることができなかった人が、自分の力で埋めていくことができるのです。 

 

 小さかった子どもには無理だったことも、今のあなたならできるのです。それほど今のあなたは成長し、いろいろなものを乗り越え、本当の自分を自分で労わり勇気づける「力」があるのです。

 

 インナーチャイルドセラピーは、今の自分の力を活用するための方法です。

 このセラピーによって、あなたの中の潜在的な、プラスストロークが、フツフツと顔を出してきます。

 そして、こころを埋め尽くしていたマイナスのコマが、まるでオセロゲームで黒が白に裏返っていくように、変化していきます。

 これが嘆きの作業や癒しの作業であり、「浄化される」という言葉で表現されることもあります。

 

 私は○○でないとダメなんだ、○○だから私が悪いんだ、私は愛される価値がないんだ...。そんな信念が、私は私のままでいいんだ、私は大切なんだ、私は愛される価値があるんだ...というプラスの信念に書き換わっていきます。

 

 

 傷が深い場合、縛りが強い場合は、信頼できる誰かや、カウンセラーの援助を是非借りてください。適切に人に援助を求めることは、自分自身を大事にする健全な甘えです。そしてあなた自身の潜在力で、自分を癒し、愛することができることを一緒に実感してください。

 

 アダルトチルドレンの概念を日本で最初に提唱した西尾かずみさんは、こんな風に語っています。

 

 『自分が育つ過程で受けたこころの傷は、自分の責任ではありません。しかし、その癒しは自分で責任を持ってやっていくものです。癒しの過程で誰か信頼できる人にガイドになってもらうことは必要です。

 しかし、その人を神様にするのはやめましょう。癒しの力は、あなた自身の中にあるのですから。』