子どもの障害を学ぼう! 

  

 

 近年、障害がないように見える子どもたちの障害が注目され、教育現場での対応が急がれています。

 

 

 『ADHD(注意欠陥多動性障害)』『LD(学習障害)』という言葉は、今でこそよく耳にする言葉ですが、つい最近までは特別な配慮も受けられないまま、理解もされない状況でした。

 

 これらの障害が注目されるようになって、教育機関では障害を持った子どもへの理解が深まってきましたが、対応については、まだまだ追いついていない状況です。

 障害のある子どもの親は、孤立した状況に陥りやすく、自責感に苛まれていることも多くあります。このように深い悩みを抱えた親たちと、カウンセリングで出会うことはよくあることとお聞きします。

 

 「障害のある子どもに対して、どのように対応していけばよいのか...?」

 

 「今後どう育てていけばよいのか?」という、深い悩みを抱えて相談されたとき、どのように対応したら良いのでしょうか?

 

 このような問題に関わるためには、具体的な支援や方法を知る前に、子どもの障害についての知識が必要になります。

 

 ここで、教育現場でよく耳にする1)自閉症 2)ADHD 3)LDという3つの障害に注目し、知識を深めると共に、子どもの問題への理解を深めていきましょう。

 

 

 

1) 自閉症


 自閉症は、多動、情緒不安、気分変動、偏食、感覚過敏、自傷・他害行為などの特徴を持つ、発達障害です。


 1960年代後半になって、脳の器質的障害であることや、知的な障害が見られることが明らかになりましたが、それまでは親のしつけが問題として捉えられてきたり、絶対的受容による治療が有効であるなど、自閉症の基本的な考え方すら揺れ動いていました。

 

 近年では、知的障害を伴わない自閉症(高機能自閉症)の存在が明らかになり、知的水準に合った支援が求められるようになっています。

 

 この高機能自閉症の特徴は、対人コミュニケーションの困難さ、集団生活での適応困難、感情を読み取ることが不得意、自分の感情を上手く説明することができない、思考の堅さ、行動の柔軟さの欠如などがあげられますが、知的な発達に遅れが見られないため(IQ70以上)、”気になる子”ではありますが、障害に気が付くのが遅くなることが少なくありません。

 

 中学生になってから不登校になり、そこで初めて明らかになったり、社会に出てから周囲と上手くやっていけないことで、初めて判明することも多くあります。

 

 

 

 

 自閉症への理解は、テレビドラマなどを通じて多くの人に共有されるようになってきましたが、親は子どもの将来のことを真剣に心配しています。
 
 

 

2) ADHD(注意欠陥多動性障害)

 

 ADHDは7歳になる前に、不注意、衝動性、多動性という主症状が現れ、それらの行動特性が診断基準と合致したときに、医師が診断を下します。

 

 原因としては今のところ、脳の機能的・器質的な障害が原因の軽度発達障害の1つとして位置付けられており、子どもの性格や親の養育態度が原因ではないとされています。

 

 特徴としては、集中力が乏しく、精神的努力の持続を要する課題に対しての意欲が低く、走り回ったり高いところに上ることを好み、手足をバタバタと動かし落ち着きのない様子が見られます。

 

 順番を待つことが困難であったり、落ち着かず授業中に立ち歩いたりするため、教師も指導が困難で、学校生活での集団行動に適応することが難しいことが多くあります。

 

 また、友人関係を形成するときも、言ってはいけないことを言ってしまったり、自分勝手な行動を取り、ルールを守れなかったりするため、どうしても一人で過ごすことが多くなり、結果的に孤立してしまうこともあります。

 このような状況に陥るため、ADHDの子ども自身も、ストレスフルな環境下に置かれてしまうことも少なくありません。

 

 ADHDに対する指導が難しいことから、周囲の人たちを巻き込んでしまうこともあります。授業中に騒いでしまうこともあるため、他の生徒の集中力も削いでしまうなど、本人だけではなく、二次的に様々な問題が生じやすい状況になることもあるのです。

 

 

 
 多くの場合は、10歳を過ぎた頃から多動行動は落ち着いてくるとされていますが、注意力の継続が困難であるため、中学生頃になると、非行などに巻き込まれることがあります。
 
 

 

3) LD(学習障害)

 

 LDとは、知的面の障害はないのに、”読む”聞く”話す”書く”計算する”といった能力の習得や使用に著しい困難を示します。


 しかし、これらの状態は「教え方が悪かった」「勉強していないからできない」などの環境要因や、他の障害によって学習が損なわれ習得できていない場合には、学習障害とは呼びません。

 

 この障害は、中枢神経系の機能障害が原因だと考えられています。

 

 特に、脳の情報処理機能に何らかの障害があるとされており、位置関係や空間能力、社会的認知に問題が生じる「非言語性LD」と、算数障害、独自障害などの「言語性LD」の2つに分けられます。

 

 LDは、本人の努力不足や周りの指導不足、保護者の養育問題などが原因で起こったものではありません。


 この理解が得られず、周囲から執拗に責められたり、劣等感を抱えてしまう子どもがいます。知的能力があるが故に、自分自身の問題点を自覚し、理想と現実のギャップに苦しみ、目標に向かって意欲的に取り組むことが困難になることもあるのです。

 

 LDは、知的に遅れがなく、発達に深刻な問題はないため、適切な対応を心掛けることによって、社会的な自立を実現することができます。

 

 

 

 LDは、周囲の対応次第では、劣等感を高めることで反社会的な行動を示すこともあるので、早期に子どもの状態を理解していけるような関わりを、心掛けましょう。

 

 診断をするのは、医者の仕事です。

 

 症状が深刻である場合は他の専門機関と連携することも視野に入れながら、子どもの問題であれば、医療機関だけではなく、児童相談所などの機関とともに子どもを援助していく姿勢を、心掛けましょう。