最近のいじめ問題を知ろう!

 

 

 

 いじめの問題は、非常に複雑な人間関係が存在するため、対応することが困難な事象の一つです。

 

 

 いじめという状況は、『いじめる人』『いじめられる人』『傍観者』という3つの人間関係から成り立っています。形態は「汚い」「死ね」などの『言葉でのいじめ』、蹴ったり殴ったり、盗みを強要するなどの『暴力的ないじめ』、そして置き去りにしたり、無視したりするなどの『個人の存在を無視するようないじめ』など、様々です。

 

 また、最近のいじめの特徴として問題視されているのが『いじめのゲーム化』です。このいじめは、いじめる子どもに加害意識がほとんどなく、ゲーム感覚で人をいじめてしまうため、歯止めが利かなくなってしまいます。

 不思議なことに、いじめられた子どもも、「自分がいじめられている...」という被害意識を強く持っていないことも特徴です。

 

 この背景には、「いじめられてもいいから、その集団に入れてもらいたい...」「いじめられているという事実を認めたくない...」という、子どもの思いが強い影響を与えていると考えられています。そしていじめる子、いじめられる子という役割がコロコロ変わり、教師や親がいじめを発見しにくいということも、このいじめの特徴です。

 

 最近のいじめは、生命を危機的状況へ追い込むほどの心理的苦痛を、子どもたちに与えてしまう深刻な問題でもあります。周りの大人が気付きにくいため、気が付いた時には、かなりの末期状態である事も少なくないのです。

 

 このいじめにはどのような背景があるのでしょうか?

 

 そして、どのように対応すべきなのでしょうか?

 

 子どもの心に注目しながら、いじめの背景を探っていきましょう。

 

 いじめ問題の背景には、色々な要素が隠れていて、その要素が相互作用しながら問題が生じてきます。いじめの要素としてよく見られるのが、1)学校の要素2)社会的な要素3)子ども自身の要素の3つです。

 

 

 では、この3つの要素を詳しく学んでいきましょう。

  

 

1)学校の要素


 いじめの問題の背景には、最近の子どもがよく訴える「ムカツキ」や「イライラ感」が存在しています。このように子どもが不快な感情を抱く要因の1つとして、教育機関が挙げられます。

 子どもに影響を与えている、と考えられる特徴の1つが『学力重視の教育体制』です。学校は勉強する場所ではありますが、知的能力ばかりに執着してしまうと、多方面から子どもを理解することができず、”落ちこぼれ”という劣等感を抱えた子どもが出てきてしまいます。ここで劣等感を抱えた子どもたちは、欲求不満を抱え、他者を攻撃するなど様々な問題行動で気持ちを紛らわすようになるのです。

 

 そしてもう一つの特徴として、『教師の指導力低下』の問題が挙げられます。認めたくない事ではありますが、教師が子どもをいじめることもあるほど、教師も巻き込んでいるいじめ問題が多く存在しています。

 

 しかしこの結果の全てが、教師の質の問題ではあるとは言い切れません。教師への管理体制が非常に厳しく、教師も非常にストレスフルな環境に押し込まれてしまっているのです。

 

 

2)社会的な要素

 

 いじめ問題には、各個人の問題や教育機関だけの問題だけではなく、私たちが生活する社会的要素も強い影響を与えています。

 それは、福祉問題や障害者問題でよく問われる『弱者切り捨て』の社会風潮です。この社会風潮は、弱い者いじめを子どもに模倣させてしまう危険性も強く、弱く傷付いた者を守るという優しさや心配りの大切さを、学びにくい環境にさせてしまっています。

 また、社会全体にゆとりがなく、子どもを育てる大人自身に、心のゆとりがないことも、いじめ問題に大きな影響を与えています。子どもは自立して生計を立てることはできません。このため、どうしても大人の支えが必要であり、身近な大人の影響を強く受けながら成長していきます。しかし、大人にゆとりがないため、子どもにもゆとりのない、切羽詰まった息苦しさを感じさせることになるのです。

 

 子どもは他者への配慮や弱い者へのいたわりを学ぶ機会も少なく、ストレスが増加しやすい状態から、いじめという攻撃的な方法で他者を傷つけることにより、欲求不満状態から脱しようとしてしまうのです。

 

 

3)子ども自身の要素

 

 いじめ問題が生じる背景には、子どもの個人的な要素も関連しています。いじめ問題に見られる子どもの特徴を見てみましょう。

 

いじめる子どもの特徴      いじめられやすい子どもの特徴

 

* 攻撃性が強い         * 気持ちを相手に伝えられない

* 欲求不満状態に耐えられない  * 協調性に欠ける

* 相手の気持ちを思いやれない  * 個性が強い

* 自分の気持ちを抑えられない  * 自己表現が上手くできない

 

 ここで述べる特徴は、あくまで一般的な傾向であり、すべてに当てはまるわけではありません。包括的に問題を理解していけるよう、知識を深めていきましょう。

 

 ここで学んできた3つの要因は、いじめ問題によく見られる要因ではありますが、他にも要因はたくさんあります。また、単一の要因だけではなく、複数の要因が複雑に絡み合い、いじめとして現れてくることが多いので、いじめの問題に取り組むときには、多面的に問題を捉える視野が必要です。

 

 そして、『いじめられやすい子どもの特徴』は、いじめの問題に見られる一般的な傾向として挙げられていますが、だからと言って『いじめられても仕方がない』と、安易に考えてしまうのは間違いです。

 

 最近、「いじめられる側にも問題がある」という考え方が出てきており、いじめによってつらい思いをしている子どもたちを、更に追い込める状態も出てきていますが、いじめ問題の原因は、いじめる側に責任がある場合もあります。

 

 他者の弱みを見つけ、そこを攻撃して自分の欲求不満をぶつける様な行動を肯定していても、問題は解決されません。いじめる側の子どもにも、様々なストレスがあり、欲求不満を抱えていて苦しい状況があるかもしれませんが、責任転嫁をして、子どもの悪い行動を肯定することは、子どもに間違ったコミュニケーション技法を教えてしまうことにもなります。

 

 いじめ問題は、いじめられた子どもの心に大きな傷を残してしまうため、子どもへの指導が強く求められていますが、問題にかかわりにくい側面も持っています。ケースにもよりますが、いじめた子どもをいくら指導しても問題が解決されないことがあります。

 

 このような場合には、いじめた子どもの気持ちをしっかりと受け入れることが重要です。そして、いじめを肯定せず、いじめという行動の裏側にある子どもの気持ちに共感すると、子どもの心が見えてくることがあります。

 

 問題の背景にある子どもの気持ちをしっかりと読み取り、問題に取り組むようにしましょう。