行動から心を読み取ろう!

 

 普段私たちは、『言葉』を使って他者とコミュニケーションを取っていますが、人の『表情』(笑顔・怒った顔・泣き顔)からも、相手の心を読み取り、相手がどんな気持ちでいるのかを理解しようとしています。

 

 このように、私たちが日常的に行っている表情から心を読むことに比べると、少し意識し難いことなのですが、私たちは無意識のうちに、表情だけではなく行動からも他者の心を読み取っているのです。

 

 さて、どんな場面で、私たちは人の行動から心を読み取ろうとしているのでしょうか。

 

 想像してみて下さい...。

 

 あなたは、友人とショッピング中です。

 

 あなたは、「お昼ご飯に何を食べたい?」と、友人に尋ねますが、友人はあなたの方を向かず、質問にもなかなか答えてくれません。

 

 この友人に対して、あなたはどのような思いを抱きますか?

 

 このような状況だと、”この人は、私の話を聞いていないな...。”とか”私の話をつまらないと思っているんだろうか?”とか”何か違うことを一生懸命考えているのかな?”など、色んな考えが浮かんできますよね。

 

 しかし、ここで共通していることは、『友人は話を聞いてくれていない』と感じているということです。そして、『友人が話を聞いてくれていない』という行動から、友人の気持ちを読み取ろうと努力したことも、共通しています。

 

 このような態度を友人にされた場合、あなたは淋しいと思うかもしれませんし、場合によっては腹立たしさを感じるかもしれません。他者の行動によって、自分自身に生じてくる感情は人それぞれですが、私たちは日常場面の中で、行動から他者の心を読み取り、他者関係を円滑に進めるために試行錯誤を繰り返しているのです。

 

 

 ではこれから対話中によく見られる1)相手の目を見て会話する 2)下を向いて話す 3)腕を組むという3つの行動に注目していきましょう。

 

 これらの行動は、どのような心の様子を表しているのでしょう?日常の場面を思い出しながら、理解を深めていきましょう!!

 

 

1)相手の目を見て会話する


 あなたは、自分が話をしている時に、相手が自分の目を見ながら一生懸命に話を聞いてくれると、あなたはどのように感じますか?

 

 多くの人は、”話を真剣に聞いてくれているな...。”とか、”自分の話に興味はあるのかな...。”など、自分の気持ちがしっかりと受け入れられている感覚を得られるでしょう。

 

 この『相手の目を見て会話する』行動は、『相手に興味・関心を持っている』というサインを表しています。

 

 このため、相手の目をじっと見つめる行動は『好意』とも解釈されやすいため、恋愛感情を作り出したいときに有効です。

 

 しかしながら、あまり凝視しすぎてしまうと『威圧的』な態度と、捉えられてしまうので注意しなければなりません。例えば、自分の意見を相手に押し通そうとする時や怒っている時も、相手の目を凝視して話すことが多いと思います。

 

 『相手の目を見て会話する』行動は、時と場合によって解釈の仕方は違いますが、相手の目を見て会話する背景には、”相手との積極的な交流を求めたい”気持ちが隠されています。

 

2)下を向いて話す


 自分が話をしているとき、相手が下を向いていると、あなたはどのように感じますか?

 

 人によっては、”もしかして落ち込んでいるのかな?”とか”体調が悪いのかな?”と、相手を心配する場合もあるかもしれませんが、中には”話を真剣に聞こうとしていない!”と、腹立たしく感じる人もいるかもしれません。

 

 この『下を向いて話す』行動は『相手の話に直面できない』という『逃げ』のサインであると同時に、『反省』のサインでもあります。

 

 いたずらをした子どもが、親に怒られている場面を思い浮かべてください。多くの子どもは親の目を直視できず、下を向いてしまいがちです。下を向くことで相手のことを直視しないで済むために、何とかその場に留まることが出来るのです。

 

 そして、『下を向いて話す』行動には、辛いながらも何とか話そうとする『努力』のサインでもあります。

 

 私たちは、”話したくない...”という思いを抱きながらも話さなければならない時、つい下を見てしまいます。この事を理解しておくと、相手の視線に配慮することで、コミュ二ケーションが円滑にできる環境を作るヒントが得られます。

 腹立たしさを感じる前に、相手の気持ちを読み取るようにしましょう。

 

 

 

 3)腕を組む


 あなたは、自分が話をしている時、相手が腕を組んでいると、どのように感じますか?

 

 

 「何も感じない」という人もいると思いますが、『威圧的な雰囲気』を感じる人も多いことでしょう。

 

 この『腕を組む』行動は、『私の世界に入ってくるな』という『拒否的』なサインなのです。腕を組んで仁王立ちしているおじさんを思い浮かべると、何だか怒っているような感じがしますよね。腕を組んでいる人は、無意識な行動である場合が多いのですが、知らず知らずのうちに、自分の腕が相手との壁を作っているのです。このことから、頑固そうなイメージや、揺るがない威圧的なイメージを相手に与えてしまいます。

 

 

 そして、もう1つは『自分の世界にこもりたい』という、内面の世界に注目したい欲求を読み取るサインでもあります。何か難しいことを考えるとき、腕を組んで下を向くポーズを思い浮かびませんか?

 

 複雑で難しいことを真剣に考えたい時、人は他の刺激を出来るだけ排除したい欲求に駆られます。このとき、腕が外界との壁になってくれるため、つい無意識に腕を組んでしまうのです。

 

 腕を組む行動の意味が分かると、相手の心情を読むだけでなく、自分の無意識による行動が、他者にどのような影響を与えてしまうのかを考える、良いきっかけになります。私たちは、無意識の行動で相手を傷つけたり、不快な思いをさせてしまうことは、意外とたくさんあります。

 他者の行動を見ながら、どんな感情が自分の中に浮かんでくるのか注意深く探ってみましょう!

 

 

行動から心を読むときの注意!

 

 行動の背景には、色々な気持ちが隠れています。

 ご紹介した3つの行動は、私たちの生活の中でよく目にする仕草ばかりです。

悩みを抱えた人は、下を向いて話しがちです。

 

 しかし、行動から心を読むときにも色と同様、『決め付けない』ことが重要です。行動から心を読み取ることだけに専念してしまうと、偏った考え方に縛られ、悪循環に陥ってしまうことがあるのです。

 

 腕を組むことが”癖”である人の場合、その人にとって腕を組む意味は、『私の世界に入ってくるな』『自分の世界にこもりたい』ではなく、ただ話すのに安心するポジションである可能性があります。

 

 このように行動から心を読み取る時は、どうしても読み取る側の主観が強くなり、偏った判断をしやすい状況に陥ってしまいます。行動から心を読むことはとても大切なことですが、決め付けたり誤った解釈をしないように注意しておきましょう。

 

 

 上記の注意点はあるものの、行動の裏側に隠された心に注目する作業は、他者を理解するだけではなく、自分自身を理解するときにも非常に役立ちます。自分の癖や行動が、他者にどのような影響を与えるのかを客観的に捉え、自分の行動も振り返ってみましょう!