自我状態
「今ここ」での自分はどんな性格(傾向)を持った人間なのか知ることから始めましょう。
なぜ、自分の性格を知らなくてはいけないのでしょうか。
それは、多くの人間関係のトラブルや、問題行動、心身症は、「こころと身体」「知性と情動」がアンバランスになっていることから起こるからです。
この不調和を一致させるためにも、バラバラになっている感情や思考、行動を自分の中で、理解し、統合させていく必要があるのです。
私の中に住む5人の私
例えば職場で、あなたの部下がミスをしたことで、あなたが上司に呼び出されました。
そのとき、どんな反応をしますか?自分に置き換えて考えてみてください。
ある人は、後輩に対して
①「もっと気をつけてよね。」と思うかもしれません。
②「とりあえず、今できることは何か考えよう。」と思うかもしれません。
③「上司に怒られる。どうしよう・・・。」と、不安になるかもしれません。
それぞれの反応の仕方をもとに、自分の中の傾向(自我状態)を以下のように大きく3つに区別しています。
① がP・・・Parent「親」の自我状態で、親の影響を強く受け継いだ(模倣した)思考・感情・行動。
② がA・・・Adult「成人」の自我状態で、「今ここ」で起こっている状況に直接反応している思考・感情・行動。
③ がC・・・Child「子ども」の自我状態で、自分が子どもの頃にしていたのと同じような反復としての思考・感情・行動。
上記の3つのうちPは、親と同じような私(自我状態)ですがさらに2つの働きに分類されます。
CP(Critical Parent)=厳格で批判的な父親のような私(自我状態)
NP(Nurturing Parent)=世話好きで思いやりのある母親のような私(自我状態)に分かれます。
また、Cは、子どものころのような私(自我状態)ですが、さらに2つの働きに分類されます。
FC(Free Child)=自然な子どものように自己表現ができる私
(自我状態)
AC(Adapted Child)=順応的で周囲に合わせるような私
(自我状態)に分かれます。
A (Adult)は、唯一過去の影響を受けず、「今ここ」で起こっている状況に適切に反応している大人の私(自我状態)です。
P=Parent |
A =Adult |
C=Child |
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育ててくれた人たちと同じような行動・考え・感じ方などをとる自分(親の模倣)〔倫理・道徳・スローガン〕 |
今の大人の自分が冷静、合理的に判断して、行動をとる自分(「今ここ」で起こっている状況への適切な反応)〔理性的・合理的〕 |
育ててくれた大人の元で培った幼児期と同じような、行動・考え・感じ方などをとる自分(自分が子どもの頃にしていたのと同じ反応)〔楽しい・創造的・素直〕 |
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C P(CriticalParent) |
N P(NurturingParent) |
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F C(Free Child) |
A C(Adapted Child) |
厳格で批判的、支配的な私 |
思いやり、優しさのある私 |
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自己表現が自由で何にも束縛されていない私 |
周囲の顔色を伺い自分を抑える私 |
全部で5つの傾向を表したそれぞれの自我状態は、以下の通りです。そして、どの自我状態にもそれぞれに、プラスな部分とマイナスな部分があります。
特徴 | プラスな部分 | マイナスな部分 |
CP厳しい私 (批判的な親) |
信念や価値観、理想を 持ち、それを主張する 強さがある。 また、人に対して厳し いことが言える。 |
尊大で命令的に人を 非難したり支配したがる。 人のあら探しやケチを つける。自分の価値観 を押しつける。 |
NP優しい私 (援助的な親) |
思いやりがあり寛大で 保護的、世話好きであ る。親切で優しく、進 んで援助し、親身にな って面倒を見る。 |
何とかしてあげようと いう気持ちが強く過保 護やお節介になったり 、相手の自立を妨げる 。黙って見ていられず 、つい手出しする。 |
A考える私 (理性的な大人) |
現実的、合理的で、地 に足がついている。 現時点での事実に基づ いてデータを収集し、 効率的な計画から冷静、 論理的に判断する。 |
損得に敏感で計算ずく で打算的である。コン ピュータ的で人間味に 乏しく、現実対応中心 で夢がない。考えすぎ て行動が伴わない。 |
FC自由な私 (自由な子ども) |
何かに縛られることな く自然な感情を明るく のびのびと自由に表現 できる。 自分の欲求に素直で 生きることを楽しみ、 無邪気で、人間味に富 んでいる。 |
自分中心で、自分の 欲求を満足させよう と、相手に対して幼 稚な振る舞いをする 印象を与える。 わがままや、自分勝 手で自分の感情に振 り回されやすい。 |
AC合わせる私 (順応的な子ども) |
他人を尊重し、相手に 配慮し、優先させ、協 調的であり集団の和を 大事にする。自分を抑 えてでも、周りに合わ せたり、期待に応えよ うとする。 |
自分の本当の気持ち を抑えて、他人に合わ せようとするので対人 関係に疲れてストレス を溜めやすい。評価を 気にしすぎて嫌なこと も素直に言えない。 我慢の限界になると、 かんしゃくを起こす。 |
あなたの今の「自我状態」、これを「個性」と言ったり、「傾向」と言ったりもします。
どんな「私」であってもОKなのです。大切なのは、「あなた自身が今の私(自我状態)をどのように捉えているか」ということです。